申込み・契約について

重要事項説明を受ける前に読んでほしい4つのポイント

住宅を購入しようと売買契約を締結するとき、新築物件でも中古物件でも、契約に先立って必ず宅地建物取引士による重要事項説明が行われます。

不動産取引に精通していない買主が、不用意に契約を締結してしまうと、購入目的を果たせなかったり、取引条件を知らなかったことで不測の損害を被ったりするおそれがあります。このような事態を防ぐために、宅地建物取引業者に対して、契約前に重要事項の説明義務を課し、買主の利益を保護しようとしているのです。

これから住宅などの不動産の購入を考えている人のために「重要事項説明を受ける前に読んでほしいポイントを4つ紹介します。

Contents

不動産取引における重要事項説明とは

重要事項説明とは、宅地建物の売買や賃貸借などの不動産取引において、宅地建物取引業者が取引当事者に対して契約上の重要な事項を説明することです(宅地建物取引業法35条)。

その際、説明内容を記載した「重要事項説明書」と呼ばれる書面を当事者に交付しなければなりません。重要事項説明書は、宅地建物取引業法35条に規定されていることから、業界用語として「35条書面」と呼ばれることもあります。

重要事項説明は、宅地建物取引業者が自ら売主として取引する場合だけではなく、不動産取引を代理・媒介する場合にも必要です。説明は、売買や賃貸借などの契約締結前に、有資格者である宅地建物取引士が行わなければなりません。説明する重要事項はすべて書面に記載し、その書面を用いて説明し、終了後に相手方に交付する必要があります。

説明を担当する宅地建物取引士は、説明に際して相手方から請求がなくても「宅地建物取引士証」を提示し、相手方に交付する重要事項説明書に記名・捺印をしなければなりません。この2つの手続きは、相手方が同意したとしても、省略することができません。たとえ相手方が不動産取引を熟知している宅地建物取引業者であったとしても同様です。

なお、不動産取引以外で、法令で重要事項説明が義務付けられているものがあります。参考までに紹介しておきます。

(1)マンション管理委託契約

マンションの管理組合との間で管理委託契約を締結する場合、マンション管理業者は、契約締結前に重要事項説明を管理業務主任者に行わせなければなりません(マンション管理適正化法72条)。

(2)設計・工事監理契約

設計・工事監理契約を締結する場合、設計・工事監理契約を請け負う業者は、契約締結前に建築主に対して重要事項説明を建築士に行わせなければなりません(建築士法24条の7)。

重要事項説明書に記載される事項

重要事項説明の際、宅地建物取引士が説明し、終了後に相手方に交付する重要事項説明書には、主に次の事項を記載します。

(1)物件に関する権利関係

  • 登記された権利の種類・内容
  • 私道の負担に関する事項

(2)物件に関する権利制限の内容

  • 都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要
  • 用途その他の利用に係る制限に関する事項

(3)物件の属性

  • 飲用水・電気・ガスの供給・排水施設の整備状況
  • 宅地造成または建物建築の工事完了時における形状・構造
  • 当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か
  • 当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か
  • 当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か
  • 石綿(アスベスト)使用調査結果の内容
  • 耐震診断の内容
  • 住宅性能評価を受けた新築住宅である場合、住宅性能評価書の交付の有無
  • 台所、浴室、便所、その他当該建物の設備の整備状況
  • 管理の委託先

(4)取引条件(契約上の権利義務関係)

  • 代金、交換差金以外に授受される金額
  • 契約の解除に関する事項
  • 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
  • 契約期間及び契約の更新に関する事項
  • 敷金等契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項
  • 契約終了時における建物の取壊しに関する事項

(5)取引にあたって宅地建物取引業者が講じる措置

  • 手付金等の保全措置の概要(業者が自ら売主の場合)
  • 支払金または預り金の保全措置の概要
  • 金銭の貸借のあっせん
  • 瑕疵担保責任の履行に関する措置の内容

(6)区分所有建物の場合は、さらに次の事項が追加される

  • 敷地に関する権利の種類・内容
  • 共有部分に関する規約等の定め
  • 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定め
  • 専用使用権に関する規約等の定め
  • 所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約等の定め
  • 修繕積立金等に関する規約等の定め
  • 通常の管理費用の額
  • マンション管理の委託先
  • 建物の維持修繕の実施状況の記録
    (出展:国土交通省『重要事項説明・書面交付制度の概要』より)

なお、重要事項説明書については、法文上「書面」の交付が必要とされていますので、電子メールなどの電磁的方法による交付は認められないと解釈されています。

重要事項説明の流れ

一般的な重要事項説明のタイミング

不動産取引に限りませんが、契約を急ぎすぎると、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。あとのトラブルを回避するためには、契約する前に疑問点を解消し、すべての面で納得した上で契約に臨むのがベストです。

一般的な不動産取引の流れの中で、重要事項説明を行うタイミングは、次の(3)です。

    (1)物件の情報収集・選定・見学・確認

    (2)媒介業者に依頼する場合、媒介契約を締結

    (3)重要事項説明

    (4)物件や契約内容の検討・確認

    (5)契約交渉(申込み)

    (6)売買契約を締結(手付金の授受)

    (7)決済・引渡し・入居

    (8)登記の完了

重要事項説明を受けた結果、購入しようとした物件では目的を果たせないことが判明したために契約を見送ることも十分あり得ます。上記のように説明を受けたあとに、買主が検討する時間的余裕が十分にとられている場合は良いのですが、そうとは限らないので、注意が必要です。

契約交渉の最終段階では、時間的余裕がなくなるため、かつては、売買契約の当日に重要事項説明を行い、その後有無を言わさずに契約を締結させることがよく行われていました。しかしこれでは、宅地建物取引業者に重要事項説明を義務付けた意味が失われてしまいます。契約交渉の際、重要事項説明から契約締結までのスケジュールがどのようになっているのかは、必ず確認しておくようにしましょう。

重要事項説明は、契約日の数日前に受けるのが望ましい

重要事項説明は、買主にとって購入の最終意思決定を行うための重要な判断材料になります。じっくり最終決定をするためには、重要事項説明から契約締結までのスケジュールに余裕をもたせ、少なくとも契約日の数日前に重要事項説明を受けるのが望ましいといえます。説明当日の理解を深めるためには、事前に重要事項説明書に目を通しておくことも大切で、予め重要事項説明書の写しを渡してもらうように要求しても、何ら問題ありません。

なお、宅地建物取引士による重要事項説明が済むと、確かに重要事項の説明を受けたという意味で、重要事項説明書に署名・捺印を求められます。署名・捺印した段階で、すべての説明を了解して承認したものと見なされますので、署名・捺印は慎重に行いましょう。

内容が理解できなかったり、疑問点が残ったりして納得できない場合は、納得できるまで質問しましょう。その場で解決できそうにない場合は、日を改めて署名・捺印するぐらいの心持ちが必要です。

なぜ重要事項説明を受ける必要があるのか

買主が重要事項説明を聞くメリット

不動産取引は、動産取引と比べて権利関係や取引条件が極めて複雑です。複雑な権利関係や取引条件を十分に調査せず、確認もしないで契約を締結してしまうと、当初予定していた購入目的を果たせないだけではなく、取引条件を知らなかったことによって不測の損害を被るおそれが生じます。

このような事態を防止するために、専門的な知識や経験、調査能力を持つ宅地建物取引業者に対して、重要事項の説明義務を課し、買主が十分に権利関係や取引条件を理解した上で契約を締結できるようにしたのです。

契約前に説明を義務付けているのは、受けた説明内容に納得できない買主に、何らペナルティを受けることなく契約を締結しない自由を認めているからです。仮に新築物件の場合などで申込金を支払っているときは、契約を締結しない場合、全額が返還されることになります。

困ったときにはどこに相談できるの?

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不動産取引において、「説明内容が事実と異なる」「説明に納得がいかない」などの困りごとやトラブルが起こったときに専門家と相談できる窓口を紹介します。

(1)「法テラス」日本司法支援センター

TEL:0570-078374(おなやみなし)(平日9:00~21:00、土曜日9:00~17:00)

2006年総合法律支援法に基づき、総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的として、法務省所管の独立行政法人として設立されたのが「日本司法支援センター」です。「法テラス」の愛称で呼ばれ、相談内容に応じて、法的トラブルの解決に役立つ情報や適切な相談窓口を紹介してくれます。法律の専門家である弁護士が対応してくれますので、安心して相談できます。

(2)「国民生活センター」「都道府県・市区町村の消費生活センター」

TEL:局番なしの3桁「188(いやや)」(消費者ホットライン)

法律問題に限らず消費にかかわるトラブル全般は、消費者ホットラインを利用できます。

消費者ホットラインは全国共通の電話番号で、全国700以上設けられた消費生活センターとすべての市区町村に設置された消費生活相談窓口の中から最寄りの相談窓口を紹介してくれます。

土日祝日で消費生活センターの相談窓口が開かれていないときは、国民生活センターが相談を受け付けてくれます。年末年始(12月29日~1月3日)を除けば、原則毎日利用することができます。

(3)上記以外に次の機関でも相談できます。

  • 国土交通省の地方整備局や都道府県の宅地建物業法所管窓口
  • 社団法人全国宅地建物取引業保証協会(取引業者が同協会会員の場合)
  • 社団法人不動産保証協会(取引業者が同協会会員の場合)
  • 財団法人不動産適正取引推進機構

重要事項説明にまつわるトラブル

虚偽記載や調査・説明不足による瑕疵トラブルの例

不動産取引において、宅地建物取引業者に義務付けられている重要事項説明に虚偽記載や調査・説明不足などのためトラブルになった事例を紹介します。いずれも裁判にまで持ち込まれた事例です。

(1)市街化調整区域の土地についての虚偽説明の事例(宮崎地裁判決2000年10月11日)

《事案の概要》

    買主は、媒介業者の媒介で売主との間で土地付建物の売買契約を締結した。本件土地が市街化調整区域内にあるため、開発行為、建物の建築や改築などについては、都市計画法によって制約されていた。しかし重要事項説明の際、媒介業者は具体的な制限の内容を説明しなかっただけでなく、買主に建物の建て替えは可能であると説明していた。

    その後、買主は建物を建て替えようとしたが、建築業者から建て替えができないことを知らされため、媒介業者に対して、不法行為に基づく損害賠償を求めた。

《判決の要旨》

    媒介業者としての説明義務が尽くされておらず、虚偽の説明を行ったとして、買主の損害賠償請求が認められた。

(2)市街化調整区域の土地の説明義務違反の事例(津地裁四日市支部判決 1997年6月25日)

《事案の概要》

    買主は、将来住宅を建てる目的で市街化調整区域の土地を購入した。その目的を媒介業者に伝えいていたが、媒介業者は売主に伝えていなかった。売主は、媒介業者に本件土地が市街化調整区域内にあるため建物が建築できない旨を契約書に明記するよう求めたが、媒介業者は、特約として「①地目が山林のため建築の場合、開発許可等を要する。②調整区域のため売主は建物について責任をとらない。③開発許可等については買主負担とする」と記載した。媒介業者が作成した重要事項説明書では、「市街化調整区域」「建築許可等を要す」「古家有」などと記載されており、買主は建築ができるものと信じて契約を締結した。

    4年後、買主が本件土地の半分を売却しようとしたところ、建物の建築ができないことが判明し、買主は、売主に対して錯誤無効を理由に代金の返還を、媒介業者に対して重要事項説明義務違反を理由に損害賠償を求めた。

《判決の要旨》

    売主については、買主の購入動機が伝えられておらず、要素の錯誤があったとは認められない。

    媒介業者は、本件土地に建物を建築できない旨を明確に説明すべき注意義務があったにもかかわらず、それを怠り、いかにも建築ができるかのように誤信させたとして、買主の損害賠償請求が認められた。

(3)マンションの方位についての説明義務の事例(京都地裁判決 2000年3月24日)

《事案の概要》

    買主ら(13世帯)は、新築マンションを売主の販売代理業者から買い受けて入居した。

    売主は、分譲にあたりパンフレットで「全戸南面、採光の良い明るいリビングダイニング」、新聞広告などでも「全戸南向き」「全戸南向の明るい室内」と記載していた。しかし、実際は、バルコニー側が真南から62度西方向に向いていたことが判明し、買主らは、南向きが偽りで、日照の減少、光熱費の増加、価格減少等の損害を被ったとして、売主に対して損害賠償を求めた。

《判決の要旨》

    売主には、買主の意思決定に重要な意義を持つ事実について、不正確な表示や説明を行わないという信義則上の付随義務がある。特に未完成のマンションの場合、現地見分により方位を確かめることができないことから、パンフレットなどの南向きとの記載は、不正確な表示・説明であるといわざるを得ず、売主に信義則上の付随義務違反があるとして、買主らの損害賠償請求が認められた。

(4)眺望を売り物としていたマンションの売主の説明義務違反の事例(福岡地裁判決 2006年2月2日)

《事案の概要》

    売主は、買主との間でマンションの売買契約を締結した。本件マンションの西側は海に面しており、広告用パンフレットには「全室オーシャンビューのリビングが自慢です」と記され、完成予想図には、海側に電柱その他何の障害物も記載されていなかった。しかしマンション完成後、購入した居室から海の展望が電柱と送電線で遮られていることが判明したので、買主が本件売買契約を解除したところ、売主は、売買契約に定める額の違約金の支払いを求める訴えを提起し、買主は、手付金の返還、オプション工事代金及び慰謝料の支払いを求める反訴を提起した。

《判決の要旨》

    建築前のマンションの販売では、買主は現物を見ることができないので、売主は、買主に対して販売物件に関する重要な事項について可能な限り正確な情報を提供して説明する義務がある。本件のマンションの眺望に関する情報は重要な事項にあたり、売主には、電柱や電線が眺望に影響を与えることを具体的に説明すべき義務がある。これを怠った売主の責任は免れないとして、売主の違約金請求は棄却され、買主の手付金及びオプション工事代金の請求が認められた。

重要事項説明義務違反の宅地建物取引業者が負う責任とは

重要事項説明を怠った宅地建物取引業者は、いったいどのような責任を負わされるのでしょうか?

重要事項説明は、宅地建物取引業法上、宅地建物取引業者が業務を行うにあたって最も基本的で重要な義務として位置付けられています。万一重要事項説明の義務違反があった場合は、当該宅地建物取引業者に対して、指示処分または1年以内の業務の全部または一部停止の処分がなされ、さらに情状が特に重いときは、免許の取り消し処分を受けることもあると規定されています(宅地建物取引業法65条・66条)。

(1)指示処分

指示処分とは、法令や不適切な事実を是正するために違反者がどのようなことをすべきか、またはどのようなことをしてはいけないのかを監督機関が宅地建物取引業者に命ずるものです。監督機関が作成した指示書が宅地建物取引業者に交付され、指示書に記載された命令の内容通りに実施されているかを、後日確認する措置が講じられます。

(2)業務停止処分

指示処分に従わなかった宅地建物取引業者には、業務停止処分がなされます。

業務停止処分とは、一定期間、宅地建物取引業に関する業務を禁止する処分です。ただし、業務停止開始日前に締結された契約(媒介契約を除く)であれば、取引を終結させるための業務は除外されます。

国土交通省が宅地建物取引業法違反に対する監督処分を行う際の統一的な基準として定めた「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準」では、重要事項説明の義務違反があった場合の業務停止日数について、次のように取り扱われます。

・書面を交付したが、重要事項の一部を記載しなかった場合、虚偽の記載があった場合、説明をしなかった場合、宅地建物取引士以外の者が説明を行った場合は、関係者の損害の発生の有無や程度によって7日~30日。

・書面を交付しなかった場合は、関係者の損害の発生の有無や程度によって15日~60日。

(3)指導・助言・勧告

監督処分に至らない違反行為については、違反行為の軽量や態様などを総合的に勘案した上で、指導・助言・勧告がなされることがあります。宅地建物取引業法は、「国土交通大臣はすべての宅地建物取引業者に対して、都道府県知事は当該都道府県の区域内で宅地建物取引業を営む宅地建物取引業者に対して、宅地建物取引業の適正な運営を確保し、または宅地建物取引業の健全な発達を図るため必要な指導、助言及び勧告をすることができる」と規定しています(同法71条)。

重要事項説明を受けるための準備

最後にまとめとして、重要事項説明を受ける前に読んでほしい4つのポイントをおさらいすることにします。

    (1)まず重要事項説明の趣旨や内容をよく理解しておきましょう。

    (2)重要事項説明は、買主にとって購入の最終意思決定を行うための重要な判断材料になります。じっくり最終決定をするために、重要事項説明から契約締結まで、余裕のあるスケジュールが望ましいといえます。もしそのようなスケジュールになっていない場合は、売主や媒介業者と交渉した方が良いでしょう。

    (3)重要事項説明は、買主の利益を保護するための制度です。不動産取引で説明内容が事実と異なったり、説明に納得がいかない場合には、相談できる窓口がたくさんあることを覚えておきましょう。

    (4)重要事項説明の義務違反をした宅地建物取引業者に対して、法律は重い責任を課しています。過去のトラブルの事例を参考に、もし重要事項説明義務違反にあたると思われる場合は、直ちに専門家に相談しましょう。

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